謝らない

イギリス生活よもやま話【エッセイ】

プロフィール

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Teeka(フリート妙子)。イギリス人と結婚して、イギリス南東部に住んで、15年が過ぎました(はっや〜い!)。
夫とのなれそめは、よくある話なんですが、彼がわたしの英語の先生だったことです。
静かな海辺の田舎町で、教師を退職した父ちゃん(夫)と、ふたりで暮らしています。

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謝らない

【わたしのせいじゃない It's not my fault.】


去年、ひょんなことから、ステンドグラスを習いに行くことになりまして。で今シーズンもまた、週1回、夜に通ってるんですけど。

先週、その教室で、こんなことがあった。
わたしと向かい合った机で、年のころ30代後半といった感じの女性が、作業をしていた。カットしたガラスに銅のテープを巻いて、その銅の部分に、ハンダを付けて、ガラスを接続していく。

そのハンダ付けをしていて、何かの拍子に、彼女は、スタンドに立てかけてあった熱いハンダゴテを、倒してしまったのだ。

そばに紙があったので、たちまち火がついて燃え上がったが、飛んできた先生のスティーブンとわたしとで、火は消し止めた。

ところが、あーあ、スティーヴンが新しく買いそろえた白木の机に、長さ5cmほどの、真っ黒な焼け焦げができちゃった。

そのとき、倒した本人は、「I’m sorry」と言ったが、そのあと、すぐに、あわててこう付け足した。

I apologized but it’s not my fault ! (謝ったけど、わたしのせいじゃない!)

あたしゃ、椅子からずり落ちそうになったよ、ホントに。

いよっ! 出ましたっ! 
イギリス人お得意の「イッツ・ノット・マイ・フォールト」!

あんた、何言うとんねん。あんたのコテ、他にだーれも触ってないやん。他の人は、全員が自分の席についていたんだもの。

自分が倒して、自分が黒焦げにして、自分のせいじゃない、って、どんな理屈やねん。でもこのセリフ、イギリス人って、よく言うんだ。

It's totally, completely, utterly, absolutely, 100 % your fault !!!!!!

ってネ、あたしゃ言ってやろうかと思いましたよ、ふんとに、もう。
うん、黙ってたけどね。

これに対して、スティーブンは何も言わず、黙っていた。「今度から気をつけて」ぐらいは言うかな、と思ったけれど。まあ、いつも穏やかで優しい人だから。

It's not my fault.

このセリフ、イギリスで、イギリス人の職場で働いたことのある方は、すでにおなじみだと思うが、わたしたち日本人も、ここで暮らすからには、身に着けておかなくてはならない言葉ではないだろうか。自らの身を守るために。


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次の日。
夕方になって、わたしはあまりに疲れたので、もう料理つくるのイヤっ、とストライキに突入した。そして、インディアン・テイクアウェイを取ることにした。

アメリカではテイクアウトって言うのかな? イギリスではテイクアウェイといって、お店で作ってもらって持ち帰る料理のことである。

美味しいインド料理のお店が、近くにあるので、贔屓にしている。チキン・ティッカ・マサラと、ピロウライスと、ペシャワリ・ナンはわたしの好みで、いつもの定番である。

電話で注文しておいて、20分ぐらいしてから、ワンコオヤジ(うちの父ちゃん)に取りに行ってもらった。

歩いて行ける距離だが、アツアツが食べたいだろうから、と、車で行ってくれた。その間に、わたしはサラダを作ったり、お皿を温めたり。

帰ってきて、渡された袋を見ると、やだあ、中身がこぼれてるじゃないのオ。わたしの好きなチキン・ティッカ・マサラは、カレーみたいなドロリとした液なので、もう、袋の中がベトベト。

だめじゃーん、こぼしちゃあ。
と言うと、ワンコオヤジめ、こうヌカシよった。

I don’t think it’s my fault. (僕のせいだとは思わない)

ぎゃーっはっは、出ましたぁ〜! 
♪出ぇーた、出ぇーた、「僕のせいじゃない」がぁー、♪ (大幅に字余り)

うひょー、昨日の今日、このタイミングで出るとは思わなんだ。
そんなもん、夫よ、おまえのせいに決まっちょるわい!

お店のインド人の兄ちゃんはネ、毎日、料理を袋に入れてンだ。だから、持ち帰るときにこぼれないように、ちゃんと考えて、汁のあるものを底に入れてンの。

ところが、おまえさん、車の中で、袋を水平に置かなかっただろ。
それか、荒っぽい運転したか、どっちかだ。

それなのに、お店の兄ちゃんに責任をなすりつけようとする。
何なんでしょうねえ、これって……。

こんなときでありますよ。
あー、夫はイギリス人なんだなあ……と、遠い目になるのは。

と、この話を英語のメルマガで書いたら、読者さんからこんなメッセージが届いた。

              ◇     ◇     ◇

アメリカ人と出会い頭の衝突事故をした日本人が、お見舞いに行って、「すみませんでした」と言った途端、それまでは、”お互い様”だった態度が、急変して、賠償責任を追求された。

取り敢えず、”すみませんでした”と言うクセは、欧米人に対しては、気を付けましょう。

              ◇     ◇     ◇

「事故を起こしたとき、謝ってはいけない」とは、よく聞く話である。謝るということは、自分に非があることを認めたってことになるから、責任を追求されても文句は言えない。だから、責任回避のために、謝らない。

ところが、日本人のとりあえずの謝罪は、責任はひとまず置いといて、まずは人間関係をスムーズにする潤滑油的に使われることが多い。だから、「謝った自分が責任をとります」という意味では、必ずしもないのだ。

アメリカの現地法人の副社長として活躍した経験を持つ、ビジネスコンサルタントの高木哲也氏の著書「謝らないアメリカ人 すぐ謝る日本人」に、こんなくだりがある。

「自分の非を認めたときに、ほんとうに責任を感じて謝るのはよいが、実際には自分の責任とは思ってもいないのに、その場かぎりの言いのがれに『申し訳ありません』と平身低頭するのはいかがなものかと思う。そこには、自己責任を全うするという誠意ある姿勢が感じられにくいからである」

ううーむ、なるほど、なるほど。
そういえば、欧米人だけでなく、韓国人も、中国人も謝らないと聞く。

なんでもかんでも謝って、カドを立てずに処理しようとする日本人の態度も、責任を考えれば、ちょっとおかしいし、かといって、あきらかに自分のせいなのに、「自分のせいじゃない」と自己防衛に固まるイギリス人も、やっぱりちょっとおかしい。

でも、自分が発した言葉に対して責任を取らなければならない、という意識を持つ社会で暮らすからには、やたら謝ることはやめなきゃ。
と、わかっちゃいるけど、つい、やっちゃうんだ、「あ、ごめーん」って。
反省、反省。


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