地球温暖化

イギリス生活よもやま話【エッセイ】

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Teeka(フリート妙子)。イギリス人と結婚して、イギリス南東部に住んで、15年が過ぎました(はっや〜い!)。
夫とのなれそめは、よくある話なんですが、彼がわたしの英語の先生だったことです。
静かな海辺の田舎町で、教師を退職した父ちゃん(夫)と、ふたりで暮らしています。

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地球温暖化

【地球があったまると、イギリスは寒くなる】

五月の下旬に、気温が三十度に上がった。
イギリスの五月で三十度、これはとんでもないことである。

それでも、湿気がないというのは、なんとありがたいことか。いくら外気温が三十度でも、家の中に入るとひんやり涼しいし、木陰では、さわやかな風が肌を撫でて行く。

わたしがイギリスで暮らし始めたのが、かれこれ十三年前。当時は、真夏でも気温が三十度を超えることはめったになく、「うわっ、きょうは真夏日だ!」と思ったら二十八度。三十度を超えれば、ニュースになった。

ところが近年は、夏に三十度を超えることが珍しくない。確実に、ひたひたと温暖化の波が押し寄せているのだ。そして、その忍び寄る波に、ひとつのパラドックスが、一抹の恐怖となっ、見え隠れしている。

《地球の温暖化が進むと、イギリスは寒冷化する》

という、このパラドックス。
いえいえ、ジョークなんかじゃありません。

これは、以前からいわれていたことだが、近年の温暖化のスピードアップで、またもやこの問題が、さらに現実的な危惧を帯びて浮上してきた。

なんだか「風が吹くと桶屋がもうかる」みたいな話だが、つまり、こういうことになる。

おっと、その前に、ちょっと世界地図を広げてみましょうか。そのほうが説明しやすいから。

世界地図というのは、あれですね、自分の国が地図の中心に来るように、印刷されているんですねえ。

まあ、考えてみればあたりまえなんだろうけれど、わたしはイギリスに来てイギリスの世界地図を見るまで、それに気がつかなんだ。

だから日本の地図なら、日本が中心で、右側に太平洋、その先にアメリカ大陸。そして左側にユーラシア大陸が来る。

ところがイギリスの世界地図は、イギリスが中心に来るから、左側に大西洋、その先にアメリカ大陸。

イギリスの右側は、すぐにヨーロッパ大陸、そしてアジア大陸と来て、中国の先っちょに、ちょこんと、ミニチュアのブーメランのような形で浮いているのが、日本だ。

なるほどねえ。
イギリスに来てはじめてこの地図を見たとき、やっと、なぜ日本が「ファーイースト(極東)」と呼ばれるのか、しみじみとわかった。本当に東の端っこ、いーっちばん右端にあるからだ。

さて、ヨーロッパと日本の位置関係を緯度で見ると、南国スペインのマドリッド、これは日本では、岩手県の盛岡の少々北にある。

ローマが青森のあたり、パリは樺太、ロンドンはパリよりも少し北にあ
るから、アリューシャン列島のあたりだ。

スコットランドの北なんて、もう、ベーリング海、カムチャッカ半島の付け根のあたりだもの。つまり、イギリスは、シベリアとおなじくらいの緯度にある国なのだ。

さ、これくらい、しつこく言っておけばいいだろう。
えーっと、何が言いたいのかというと、ヨーロッパが案外と北に位置することを、再確認していただきたいのである。ここんとこをしっかり把握しておかんことには、話が進まないのだ。


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さて、イギリスは北海道よりも北に位置するのに、北海道より暖かい。北海道には流氷が押し寄せてくるのに、イギリスには来ない。なぜ?

はい、それはメキシコ湾流という、暖流のおかげです。

学生のときに、地理で習いましたよね。メキシコ湾の熱い太陽の熱を吸収した、この潮流が、北アメリカ大陸の東海岸を通って、エンヤトット、エンヤトット、大西洋を横断して、イギリスやアイスランド、そしてグリーンランドあたりまでやってくる。

もしも、この暖流がなければ、イギリスはシベリア並みの寒さだ。ところが、シベリアより五〜八度も高い気温を保っている。

仮に、暖流なしでこの気温を維持するとすれば、英国全土の電力でもって供給できる熱量の、二万七千倍の熱が必要となる。これだけの熱を、メキシコ湾流は、イギリス沿岸へ運んでくれているのだ。

イギリスの国家はバラなのよ、などと優雅なことをいっていられるのも、やれ、ガーデンパーティだ、やれ、ビーチでバーベキューだのと、ほざいていられるのも、みーんな、この暖流のおかげなのだ。

もう、これからは「暖流さま」と呼ばせていただこう。イギリスが、高緯度のわりに温暖な気候を保っていられるのは、ひとえにこの、暖流さまのおかげである。

ところが、このまま温暖化が進むと、なんと、暖流さまがお隠れになってしまうという、恐ろしい運命が待ち受けているのだ。

地球温暖化が叫ばれて以来、北極の氷が解けたらえらいことになる、というホラーな話は、これまでに何度も聞いてきた。

この二十年で北極の氷は四十六パーセントも薄くなった。早ければ二〇二〇年、おそくとも二〇八〇年まで、確実に北極の冠氷が溶けるという。そして、それにともなって北極熊の絶滅など、野生生物にも大きな影響が出るだろう。

ところが、海面上昇による沈没以前に、イギリスではもうひとつ、あの、ありがたい暖流さまに異変が起こるという、恐ろしい問題がある。そして、すでに、じわじわと異変が起こっているのだ。

このたび、ケンブリッジ大学のワダムズ教授が、英国海軍の潜水艦に乗り込んで、北極やグリーンランドの海中を調査した結果が報道された。

それによって、温暖化現象が確実に進んでいて、暖流さまがヤバイ、という動かぬ証拠をつきつけられたのだ。

まるで、映画『ジュラシック・パーク』で、恐竜がやってくるとき、その姿はどこにも見えないけれど、地面の水溜りの水面が揺れる。その揺れで、確実に恐竜がいることがわかる。そんな恐怖に近い。


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毎年冬になると、北極に近いグリーンランドあたりの海は凍って、オデン・アイスシェルフという氷棚ができる。で、そこにチクワだの、コンニャクだのを入れて、あ、大根もいいねえ、って、いや、そーゆー話じゃなくて。

オデンというのは、この地域の名前のようだが、その氷棚の氷の結晶は、含んでいる塩を、まわりの海に排出する。すると、塩分の濃い水は重いので、三キロの深さの海底まで沈んでいく。

このプロセスによって、オデン・アイスシェルフの下に、冷たい水が集まった巨大な水柱が、九〜十二本ほど形成される。

氷棚から海底まで伸びる、この濃塩分の冷たい水柱を《煙突》と呼ぶが、この煙突のおかげで、やってきた暖流は冷たい水と混合することなく、暖流としての役目を果たすのだ。

煙突を通って海底に到達した冷水は、海底を伝って南の海へと流れて行く。すると南国の太陽で暖められて、再び暖流となってグリーンランドあたりに到達する。という、膨大なる自然の循環を、大西洋は、年毎に連綿と繰り返してきた。

ところが、温暖化で異変が起きた。
温度が高くなったために、一九九七年以降、グリーンランドのオデン・アイスシェルフがほとんど形成されなくなってしまった。

氷棚が形成されなくても、わずかなりとも《煙突現象》は起こる。最近観測された煙突は、たったの二本。ところが、煙突があまりにも弱体化しているので、冷水が海底に降りていくほどの強度がない。

冷水が降りて行かないから、やってきた暖流と混じって、暖流の温度を下げてしまう。暖流が暖流でなくなってしまえば、この先、イギリスで待ちうけているのは、極寒のシベリアの暮らしである。

地球の温暖化とともに、足並みそろえてやってくる寒冷化。そうでなくてもイギリスは、お天気の悪い国なのに、暖流さまがお隠れになったら、どうすりゃいいのさ。あたしゃ、サッサと日本に帰らせていただきますからねッ。


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