結婚式 (1)

イギリス生活よもやま話【エッセイ】

プロフィール

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Teeka(フリート妙子)。イギリス人と結婚して、イギリス南東部に住んで、15年が過ぎました(はっや〜い!)。
夫とのなれそめは、よくある話なんですが、彼がわたしの英語の先生だったことです。
静かな海辺の田舎町で、教師を退職した父ちゃん(夫)と、ふたりで暮らしています。

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結婚式 (1)

【イギリス式ウェディング Part 1】 
  
なんというタイミング!
6月6日、わたしたちの結婚記念日に、読者のMさんから、こんなメールが届いた。

「わたしは、イギリス人の夫と、日本に住んでいます。今年の一月に結婚式を挙げ、この夏にイギリスでも式を挙げます。イギリスの結婚式については、わからないことばかりで、不安でいっぱいです。

もしよかったら、大江さんの結婚式のお話を、メルマガで紹介していただけませんか。参考にしたいと思い ますので」
  
これがドンピシャ、結婚記念日に届いたのも、何かの因縁かもしれない。Mさんの末永き幸せを祈って、わたしは、結婚式にまつわる三つの話を、お届けしたいと思う。

ひとつは、イギリスの伝統的な結婚式の紹介、二つめは、わたしの結婚式、三つめが、わたしが感動した結婚式。
  
まずは、イギリスの一般的な結婚式を紹介しよう。ただし、わたしがこれ までに五回ほど参列した結婚式は、すべてプロテスタントのもので、カトリ ック教会で挙げるというMさんの参考になるかどうか、わからないのが申し訳ないのだが。
  
イギリスと日本の結婚式は、かなり違う。その違いを一言でいえば、日本は派手婚でイギリスは地味婚ということ。まず、イギリスには日本のような〈総合結婚式場〉というものがない。

それに近いものはあるけれど、式場と披露宴会場の設備が主で、衣装その他は自分で手配する所がほとんど。総合的でないだけ、そのぶん個性的なウエディングができるという利点がある。
  
イギリスでは、まちがっても、披露宴でドライアイスの煙の中をゴンドラに乗って新郎新婦が登場、などということはありえない。こういうことはラズマタズ(razzmatazz)といって、イギリス人は嫌う。
  
だから、デイヴィッド・ベカムとポッシュが、自分たちをキングとクイーンに見立てて玉座をしつらえた、ド派手な結婚式を挙げたとき、国民は「ケッ、自分らなんや思うとんねん」と呆れかえったものである(このことから、マスコミは揶揄(やゆ)して、彼らの大邸宅をベッキンガム宮殿と呼ぶようになった)。
  
有名人の派手婚はさておき、イギリスの一般の婚礼のうちで一番簡単なのは、戸籍登録所で挙げる結婚式である。これは宗教を伴わない法的手続きで、費用は58.5ポンド(2004年現在)、日本円にして約12000円払えば、婚姻が成立する。
  
つまり、日本で婚姻届を提出するのとおなじことだが、日本と違うのは、役所内に婚姻登録専用の部屋があることだ。

そこだけはオフィスとは別格の、高級ホテルのような美しい内装で、生花が生けてあり、証人や参列者の椅子が二十脚ばかり並んでいる。ここでは、婚姻届を短い儀式として、演出してくれるのだ。イギリスのお役所の、なんと粋な計らいだろう。
  
晴着のスーツでも着て、ブーケを手に、家族や近しい友人に見守られて、結婚証明書にサインをする。そして、儀式のあとは皆で記念撮影。部屋の中でもいいし、芝生の庭に出れば撮影用のコーナーがちゃんとあったりする。

そしてそのあと、レストランにでも行って両家で会食して、ハイ、おしまい。結婚というものは、これで充分じゃないかと、わたしは思う。

    
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とはいえ、イギリスで最も一般的に行われるのは、やはりキリスト教会での挙式だろう。花嫁花婿とも、それぞれ自宅で支度をして式場に向かう(日本でも昔はそうだったが)。 

花嫁花婿は、前日から式場で会うまで、顔を会わせてはいけないというしきたりがあるが、同棲しているカップルも多いので、そうもいかない。
  
花婿は先に教会に行き、花嫁の到着を待つ。支度を終えた花嫁を教会に送って行くのは、運転手付きのハイヤーで、ベンツやロールスロイスなどの高級車だが、イギリスでは、それらのクラシックカーが、よく使われる。
  
なにしろ普段から、1930年のダイムラーベンツなんて、博物館で鎮座しているべき車が、平気で街道をトコトコ走っているお国である。国道では、クラシックカーのラリーも行われるので、こういう車がちっとも珍しくないのだ。
  
だからイギリスを旅行して、土曜日に教会の前で白いリボンで飾られた高級車を見かけたら、ははあ、結婚式だなとピンと来ていただきたい(なぜかイギリスでは、たいていの結婚式が土曜日なのだ)。

もしも、高級車ではなくて馬車を見かけたら、ははあ、ちと金をかけたなと、まったく関係ない赤の他人の懐ぐあいにもピンと来ていただきたい。そう、馬車の方が高級車より、ハイヤー料金が高いのである。
  
こうして、花嫁が教会に到着して、式が始まる。余談だが、フランスのシャルトルの大聖堂で、有名なステンドグラスを眺めていたら、突然、ふだんは閉まっている大扉が開いて、婚礼が始まった。

ヴァージンロードを、腕を組んで歩いていくカップルを見ると、花嫁は若いのに、花婿はえらく歳を喰ってる。はっはーん、読めたぞ。あの女は遺産目当てでヨイヨイの爺さんと一緒になったんやな。

んで、爺さんが死ぬまでは間男して若い男と楽しみ、遺産が入れば南フランスでシャトーを買って好きな男と暮らす。うーむ、なかなか建設的な人生設計ではないか、あやかりたい、あやかりたい。
  
などと思っていると、祭壇の前に若い男が立っていて、ハタと気がついた。あーっ、そうか、あれは爺さんじゃなくて花嫁の父ちゃんだ。

しょーもないテレビドラマの見過ぎやでそれは的イメージを、あわてて
打ち消すと、ヤクザの情婦に見えていた花嫁の顔が〈谷間の百合〉に変った。げに、先入観というものは、恐ろしいものである。
  
わたしは、いまだにウェディングドレスを見ると、腕を組んでいるのは花婿に決まっているという日本的イメージがあって、どうもいけない。そうだ、そうだ。ヴァージンロードを最初に歩くのは、花嫁とその父だった。
  
教会に花嫁が到着すると、父親は娘と腕を組んで、祭壇の前まで歩いて行く。そして、すでに祭壇の前で待っている花婿に、「くぬ野郎、持ってけ泥棒!」といって(いわない、いわない)、娘を渡すのである。
  
そうやって式が始まり、結婚の誓いやら、指輪の交換やら、賛美歌やら、なんやらかんやら、お決まりの儀式があって、最後に、花嫁花婿が突然、別室に消えるのである。

これをはじめて見たとき、わけがわからず、おりょ? これで終わり? とキョロキョロしたが、参列者は誰も帰ろうとせず、じーっと待っている。
  
なんだ、なんだ、あの二人は式の途中だというのに、何をやってんだ。晴れて夫婦になった二人が、あんなにコソコソと参列者に隠れてやることといえば……? いや、まさか、そりゃないだろ。いくらなんでも、教会の中でっせ。神の前で、なんちゅう大胆な。
  
あとで聞いてみると、なんのこたぁない、結婚証明書にサインするために、別室に下がったのでありました。つまり、宗教儀式のなかに法的手続きが組み込まれている、ということだ。

そして、そのあと新郎新婦が、ヴァージンロードを通って退場する。外に出た二人の頭上にコンフェッティ(紙吹雪)が舞うのは、映画などでおなじみのシーンである。そしてここで写真撮影となる。

    
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結婚式が終ると、次は披露宴。この披露宴がまた、日本とイギリスでは大違い。披露宴会場はレストランやパブ、お城の宴会場など様々だが、多くの一般家庭が広い芝生の庭を持っているイギリスでは、自宅の庭で行われることも、珍しくない。

大きなテントや庭用のテーブル、椅子などの設備を貸出す専門の業者があるし、もちろん仕出屋もある。
  
それでも、結婚行進曲が高らかに鳴り響くなか、
「スポットライトを浴びて新郎新婦の入場ですっ! どうぞ皆さま拍手でお迎えくださいっ!」
なーんてことはまったくない。

会場の入口で、新郎新婦が、親や付添人らとともに招待客を迎え、全員の客が着席したら、新郎新婦も自分たちのトップテーブルに着く、ってそれだけのこと。

客席に対面する形で、トップテーブルが設えてあるが、そこには新郎新婦、およびベストマン、ブライドメイドなどの介添え人がすわる。
  
たいていは司会者がいないから、付添人のベストマンがそれを勤める。媒酌人がいないから、媒酌人の挨拶もなし。主賓挨拶なし。摩天楼のようなケーキなし(生のケーキなので、二、三段しかない)。
  
金屏風、お色直し、祝辞、カラオケ、ビデオ上映、キャンドルサービス、花束贈呈、両家謝辞、送賓、いっさいなし。ないったらない。また、結納、仲人、引出物といったしきたりも、ない。
  
だからイギリスの披露宴というのは、普通のディナーパーティとそう変らない。食事が始まると、皆でおしゃべりしながら食べる。なにしろ日本のようなアトラクションが何もないのだから、ひたすら食べることに専念する。

そして食事が終わると、まず花嫁の父が最初にスピーチをし、それから花婿、ベストマンと続く。普通、スピーチはこの三人だが、花嫁や友人がマイクを握ることもあるようだ。それから祝電披露、ケーキカット。
  
そして、ダンスが始まる。伝統としては、ダンスフロアで、最初に新郎新婦がワルツを踊る。

それから、新郎が義理のお母さん、そのあと自分の母親、おなじく新婦が義理のお父さん、そのあと自分の父親という順で踊る。同時にベストマンはブライドメイドと踊る。
  
これがファーストダンスで、このダンスが終ったらお客も参加して踊る。しかし、今ではワルツを踊ることはほとんどなく、新郎新婦の好きな曲で、ロマンチックなムードのものを適当に踊っているようだ。

わたしがこれまで経験したウェデイングでは、音楽はみんなディスコミュージックだったので、今どき、このしきたり通りにやるケースは、少ないだろう。
  
招待客は、必ずしもダンスに参加する必要はない。だから、このあたりになると、帰り始める人もある。パーティの苦手なわたしは、いつもダンスになると、抜けて帰っていた。
  
日本のような総合結婚式場がないということは、手作りで結婚式を挙げるということ。式場まかせではなく、自分たちで手配する。

印刷屋に行って、招待状やその他の印刷物を頼むことから始まって、ハイヤー、衣装、花、ケーキ、披露宴会場の手配まで、すべて自分たちでやらねばならない。
  
面倒ではあるが、個性豊かな手作りのウエディングができる。予算があればあるように、なければないように、広範囲の選択肢があることが、イギリスの婚礼の良いところだ。

わたしは、よくイギリスの悪口をいっているが、こと結婚式に関しては、大賛成。イギリスに、五重マルあげる!

No.64 2004/6/12   

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