息子の嫁

イギリス生活よもやま話【エッセイ】

プロフィール

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Teeka(フリート妙子)。イギリス人と結婚して、イギリス南東部に住んで、15年が過ぎました(はっや〜い!)。
夫とのなれそめは、よくある話なんですが、彼がわたしの英語の先生だったことです。
静かな海辺の田舎町で、教師を退職した父ちゃん(夫)と、ふたりで暮らしています。

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息子の嫁

またクリスマスの話? 
そう、わたしゃ先々週にもクリスマスのことを書いたけれど、インターネットを通じて、こうも日本のベタベタしたクリスマス情報が入ってくると、黙っちゃいられンのであります。
  
なんだい、なんだい、日本は。クリスマスが、バレンタインの次にラブホテルが繁盛する日だなんて、どういうこと? いったいいつから、クリスマスがホテルで寝る日になったんだァ? 
  
じゃ日本は何かい、「恋人の日」が年に二回あるってわけェ? どういう発想をすればそういう方向に行くのか、教えてほしいよ、まったく。わたしが日本にいた十年前は、そんな風潮はなかったぞ。 
  
と、つい鼻息が荒くなってしまうのは、イギリスのクリスマスはそんなロマンチックなものでは、断じてないからである。わたしたち、イギリスの嫁はクリスマスと聞くと、もう、うんざりして溜息が出る。
  
それは、イギリスではクリスマスが「家族の日」、いや「一族の日」だからである。「一族の日」なんて字面を見ただけで、色気なんぞぶっ飛んでしまう。
  
イギリスのクリスマスは、女が、あるいは妻が、《息子の嫁》という役割を背負って、とことん親戚づきあいをやらされる日なのである。

家を離れた子は、孫を連れて親の家に集まるし、義理の兄弟姉妹、へたをするとさらに叔父だの叔母だの、分家に本家、一族郎党、もろもろが寄って来る。
  
そのために、クリスマス前の23、24日は民族大移動。帰省ラッシュで、高速道路が渋滞して動けないというニュースがテレビで流れるのも、毎年おなじみの行事である。
  
身内だけではない。近所に身寄りのない一人暮らしの爺ちゃんがいれば、それも呼んでくる。

クリスマスで気分も高揚したイギリスの母ちゃんたちは、「ええい、十人も二十人もいっしょじゃいッ。みんなまとめて面倒みたるわッ」と太っ腹になる。家族の日であるクリスマスに、ひとりぽっちにさせてはおけない、という気持があるからだ。
  
だから、ホームステイで学生を置いている家庭では、泊り客のために部屋数が足りなくなって、学生に、クリスマスの時期だけよそに移動してもらうことも、珍しくない。

と、このようにイギリスのクリスマスは、家の中に、どこから沸いたんだ? と思うほど、人がうようよいるのである。
  
  
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先日、クリスマス・キャロルの流れる商店街に買物に行ったら、知り合いのジューンに会った。彼女は30代の教師である。
「今年も、クリスマスはハズバンドの実家で過ごすの?」
と聞くと、

「とんでもない! 今年はわたしの実家よ。毎年彼の家に帰ってたんじゃ、たまんないわよっ」
とキンキン声が返ってきた。
  
この「たまんないわよっ」といったときのジェット噴流のごとき鼻息の荒さで、彼女と舅、姑の関係がどんなものか、まあ、だいたい察しがつくというもんだ。
  
「でもね、うちは一年交替でそれぞれの実家へ帰るから、まだマシなのよ。わたしの友達なんか、25日に彼の実家に帰って、それから26日に自分の実家よ。そうしないと、両方の親が納得しないんだって。
  
だけど、せっかくのクリスマスに親子ゲンカもできないし。だから仕方なく両方の家に帰るんだけど、子供がまだ小さいのよ。ミルクとオムツをかかえての移動だもの、大変よ」
  
イギリスでは、長男といえども、親と別居がふつうである。たとえ長男が家の稼業を継いでいても、住まいは別。そのせいか、嫁と姑の問題には、日本のような深刻さはない。
  
それでも、嫁にとって姑が煙たい存在であることは古今東西変りない。嫁は夫の実家に行けばデーンと座って《お客さん》しているわけにはいかず、台所を手伝うのは当然のこと。

これも、日本と変りない。やれやれ、女はどこへ行っても、おさんどんをしなくてはならぬものらしい。
  
(もっとも、最近の日本の嫁は、デーンと座って動こうともしないのがいる。姑になったばかりの友人が、嫁に、食事の後片付けを手伝うよう、やんわりと皮肉をこめて促したが、蛙の面に水、プルッとして、いっこうに通じた気配はなかったそうな)
  

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さらに大変なのが、クリスマスプレゼント。日本のお歳暮なら、一家にひとつ洗剤でも贈っておけばすむが、プレゼントはそうはいかない。

個人の好みに合いそうなものを探して歩くのも大変だが、自分の家族はもとより、クリスマスに集まる親戚縁者全員に渡さなければならないので、かなりの出費を強いられる。
  
イギリスは、離婚率も高いが、再婚率も高い国なので、複雑な家庭が多い。友人の由紀子さんちもそうで、ご主人の両親が離婚して、それぞれが再婚しているので、両方の家族とのつきあいがある。

いきおい、プレゼントの数も倍になる。彼女は、毎年、30個ほどのプレゼントを買わなくてはならない。
  
わたしたち嫁にとって、クリスマスとは、夫の家族と、いやでも顔をつきあわせていなければならない数日間を、意味する。親戚が押しかけてくるわたしの友人(嫁)たちは今、接待やらプレゼントやらの準備で、駆けずりまわっている。
  
あまりのわずらわしさに、逃げ出したくなるのも、日本の正月とおなじこと。だから、本当に逃げ出す人のために、新聞の旅行欄では「クリスマスはホテルでのんびり」ツアーの広告が、目白押し。
  
日本の恋人たちのクリスマス。ケッ、チャラチャラしおってと思う反面、お気楽でいいよなあと、うらやましくなる話である。どうぞ、ロマンチックなクリスマスを、お過ごしくださいませ。

No.43 2003/12/20

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