男と犬

イギリス生活よもやま話【エッセイ】

プロフィール

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Teeka(フリート妙子)。イギリス人と結婚して、イギリス南東部に住んで、15年が過ぎました(はっや〜い!)。
夫とのなれそめは、よくある話なんですが、彼がわたしの英語の先生だったことです。
静かな海辺の田舎町で、教師を退職した父ちゃん(夫)と、ふたりで暮らしています。

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男と犬

【男を知れば知るほど犬が好きになる】
 
朝から黒雲がたれこめて、まるで夕方のような遣る瀬なさ。イギリスの冬は、いつもそんな暗い日々が続くが、先週の日曜日、久々に晴れわたって、太陽が顔を出した。

こんな日に、家にいてはもったいないと、午後からドーバーへ行った。
白い石灰岩の切り立ったクリフ(断崖)の下には、フランスへ渡るフェリーが発着する港がある。

そして、クリフの上は、環境保護団体「ナショナルトラスト」が所有する、広大な自然保護区になっている。
  
日曜の午後、夫とわたしは、よくここにウォークに来る。寒風吹きすさぶ冬でも、起伏の激しいクリフを歩くと、かなりの運動になり、体が暖まる。このウォークの楽しみは、じつは運動のあとの、午後のお茶にある。
  
海に向かって建つガラス張りのカフェテラスは、陽が入って明るく、ゆったりとしたスペースで落ち着ける。ここのスコーンはサクッとして、おいしいんだ、これが。
  
スコーンを二つに切って、ラズベリー・ジャムを塗って、その上にねっとりとリッチなクロテッド・クリームを乗せて。濃いめに淹れたミルクティが、乾いた喉を、やさしく潤してくれる。
  
イギリスの十二月は、午後四時には暗くなる。だから、三時には陽が西に傾く。その斜光を浴びた芝の緑、その先に海。海鳥が飛びかう下を、航跡を引いて、ゆっくりと、ドーバー海峡を渡っていく、白いフェリー。
  
西陽が、空を淡いローズ色に染め、遥かなフランスが、薄紫に煙って見える。冬の短い午後、つかのまの美しい海景を愉しみに、クリフを訪れるようになって、もう何年になるだろうか。
  
  
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お茶を飲んだあと、カフェテラスの片すみにある、ギフトショップに立ち寄った。洒落たクリスマス商品がならぶショップに、本のコーナーがある。本といっても、そこにあるのは、軽いジョークやユーモア系のものばかり。
  
パラパラとめくったあげく、思わず買ってしまったのがこの小さな絵本。『男を知れば知るほど犬が好きになる』というタイトルの、オトナの絵本である。

オリビア・エドワードという女性の書いたこの本は、あたりまえすぎて気にも留めていない、動物としてのペットの生態にハッと気づかせてくれ、そして小さな笑いを与えてくれる。
  
このタイトルの意味する「男」とは、自分の古亭主、あるいは、つきあってもう何年にもなる恋人のこと。ラブラブや、新婚ホヤホヤの時期は、とっくの昔に過ぎ去った、そういう相手である。そして、「犬」は、可愛いペットのワンコちゃん。

自分の男と犬をくらべて、ふだんは忘れてしまっている人間と動物との格差を掘り起こすことによって、可愛い犬が、いっそう可愛らしく、いじらしく思えてくる。

たとえば――
  
★犬は、外に出しても、酔っ払って帰ってくることはない。
  
★犬は、テレビのリモコンを独り占めしないどころか、さわりもしない。あなたが怒って投げつけると、行ってくわえて来てくれる。
  
★犬は、人の話の聞き方を心得ている。
   
(犬に話しかけると、ちゃんとあなたの目を見て小首をかしげたりする。ところが、男は、テレビのサッカーの試合なんぞを見ながら、生返事。そして、話の内容をちっとも覚えとらん)
  
★犬は、あなたがいないと淋しがる。
  
(男は、待ってましたとばかりに遊びに行ったり、友達を連れて来たりする)
  
★犬は、あなたの巨乳の友達がたずねて来ても、興奮することはない。
  
(ふだん家では見られないデカパイに遭遇すると、男は興奮して、彼女にやたら親切になる。ところが、犬は、そういうものを見てもあくびをしたり、後足で首のことろを、カキカキカキ……)
  
★犬は、あなたが遅く帰ってきても、文句をいわない。それどころか、遅くなればなるほどあなたを恋しがって、帰宅を喜んでくれる。
   
(男は、やれ、どこへ行っていたの、何をしていたのとうるさい。そして、腹が減ったの、メシはまだかと文句をたれる)
  
★犬は、あなたが与えるものは何でも喜んで食べる。
  
(与えられたものをなんでも尻尾を振って食べてくれれば、男だってもっと可愛いんだけどなあ)
  
★可愛い犬は、自分が可愛いなんてことはまったく知らない。
  
(これは、なかなかに薀蓄のある言葉である。自惚れだの、虚栄心だのを持たない動物たちの、なんと清々しいことよ)
  
★犬は、みっともない恰好をして、あなたに恥をかかせることはない。
  
(うちのオットットは、ちぐはぐな靴下をはいたり、セーターを裏返しに着たりする。先日は、穴のあいたパンツをはいて整骨院に行きよった)
  
  
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出会った頃の、新鮮の輝きはとうの昔に消え失せて、さりとて結婚話が煮詰まるわけでもなし。そういった、恋人との「長すぎた春」に身をおく女性なら、一度はこんな思いが胸をよぎるはずだ。
  
★あなたは、自分と犬との関係がこの先どうなるんだろうと、悩んだりすることはない。
  
★あなたは、しみじみと犬を見て、わたしはまだこの犬を愛しているのだろうかと、考えることはない。
  
★あなたは、しみじみと犬を見て、この犬は、はたしてわたしにふさわしい犬だろうかと、悩むことはない。
  
★あなたと犬の間に倦怠期はない。

うーむ、犬と男とどっちが良いか、これはなかなか微妙、かつシリアスな問題である。ドーバーからの帰り、ハンドルを握るオットットの横で、クククと笑いながらページをめくりつつ、ひとつ、これはもうなんたって絶対に犬のほうが勝ち! という項目を発見した。
  
それは――、
  
★犬は、歳をとってもハゲることはない。

No.42 2003/12/13

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