鼻くそ

イギリス生活よもやま話【エッセイ】

プロフィール

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Teeka(フリート妙子)。イギリス人と結婚して、イギリス南東部に住んで、15年が過ぎました(はっや〜い!)。
夫とのなれそめは、よくある話なんですが、彼がわたしの英語の先生だったことです。
静かな海辺の田舎町で、教師を退職した父ちゃん(夫)と、ふたりで暮らしています。

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鼻くそ

【スノット】
  
メールマガジン配信スタンドの「まぐまぐ」から送られてくる「ウィークリーまぐまぐ」に、「まぐVow」という面白話のコーナーがある。わたしは、いつもこれを楽しみにしているのだが、しばらく前に、こんな話が載っていた。
  
《息子が3歳の時、鼻をほって鼻くそを食べたところを目撃。息子に「ごめんなさい」を言わせようと「こんな時、なんて言うの?」と聞いたら、自信満々に「ゴチソウサマでした」。周りの人に「しつけがいいね」とほめられた。(やんやん)》
  
これを読んでわたしは、ぎゃっはっはと大笑い。あんまりおかしいので、友達のMちゃんにメールで送った。すると、彼女からこんな返事がきた。

「鼻くそといえば、うちの息子のKが小学校のとき、わたしゃ参観日に、えらい恥をかきました」
  
《ある日の授業参観風景》
  
隣の母親 「ちょっとちょっと奥さん、Kちゃん、鼻くそほじってるでぇ」
M子    「こ、こんな時にほじるな!」
隣の母親 「……」

K    ひとさし指についている鼻くそを、じーっと見つめる。
隣の母親 「食べるつもりとちゃう?」
M子   「まさか! ……こんな時に食べへんやろ」
隣の母親 「……」

K    パクッ!
隣の母親 「食べたっ!」
M子   「こんな時に食べるなっ!」
隣の母親 「……」

K    前歯でシカシカシカシカ……。
M子   「これっ! こんな時に味わうなっ!」
隣の母親 「……」
  

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その日の夕食どき――。
わが家ではいつも夫婦差し向かいで、CDで小さくクラシック音楽を流しながら、夕食を摂る。そして、テーブルには、いつもキャンドル・スティック(燭台)が置いてある。
  
うちの亭主は、日頃大ボケのくせに、あれでなかなかのロマンチストなんである。だから「おっ、今夜はパスタか。じゃ、キャンドルをともそうね」などといって、シュパッとマッチを擦る。

とはいえ、パスタとキャンドルとの間には、なんの関係もない。それがカレーであろうと何だろうと、気が向けばシュパッとやるのである。
  
日本のように、頭の上からカッと蛍光灯が照っていては、キャンドルをつけても意味がないが、間接照明の柔らかな光の中で、蝋燭の炎がかすかに揺れるのは、なかなかいいものである。

せっかくオトナの男と女がふたりきりで、お食事するんですもの、いいムードで、ロマンチックにネ。
  
さて、その晩は、ヴィヴァルディのマンドリン・コンチェルトを聞きながら、パスタを食べていた。そのときなぜか、わたしは例の鼻くそメールを思い出して、ククククとひとり笑いをしてしまった。
  
「なにがおかしいの?」
いやね、じつは面白い話があってね、かくかくしかじかと説明すると、
「そうなんだよ、子供ってあれを食べるんだよね。キッタナイ!」
と大いに乗ってきた。
  
ほほう、イギリスでも鼻くそを食べるのかと感心すると、彼が昔、ボーディング・スクール(私立の寄宿学校)で子供たちを教えていたとき、やはり、それを食べるところを、何度も目撃したというのだ。
  
「そういえば、昔の子供は青バナなんかたらしてたっけね」
「そうそう、それをずずずーって口の中に吸い込むんだよ」
「それ、飲む?」
「飲む!」
「うげー! あと、ほら、服の袖でハナを拭くもんだから、そこんとこがコテコテになって」
「そうそうそう!」
  
と、まあ、このように、わが家のキャンドルライトの夕食は、とてもロマンチックなのである。

  
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それから数日たって、新聞を読んでいて思わず苦笑した。それはタイムズの育児相談のコラムに、読者からのこんな質問が載っていたからだ。

「うちの六歳の息子が鼻くそをほじって、それを食べるのです。食べても、大丈夫なのでしょうか。また、それをやめさせるに、はどうしたら良いでしょうか」
  
七人の解答者の意見が載っているが、これはすべて読者から寄せられたメールからピックアップされたものだ。読者といっても、幼児を持つお母さん、孫のいるお爺ちゃんから学者、医者まで幅は広い。
  
まず、鼻くそを食べて大丈夫かという問題だが、まあ、それが原因で救急車で運ばれたという話は、聞いたことがない。

が、念のために小児科医のご意見を報告すると、鼻くその中のバクテリアは比較的無害であるし、それが胃に入れば、胃酸で殺されてしまうので、まったく心配はないとのこと。
  
やめさせるにはどうするかについては、多くが「それはまったくノーマルな行為である。叱るよりは、鼻をかむことを教えなさい」というものだった。
    
臨床心理学者は、アテンション・シーキングの行為だという。子供というものは、自分に注意を向けてもらうためならどんなことでもする。だから、いっしょに遊んでもらえないときに悪さをしたりするのは、「やめなさい」と叱ってほしいのだ。

叱られること自体はネガティブなことであっても、子供にとっては、自分に親の注意を引きつけたという意味では、成功なのだ。
  
となれば、あの授業参観日のKちゃんの鼻くそパフォーマンスは、お母さんに対するアテンション・シーキングだったのかもしれない。

お母さんが大好きで、甘えん坊だった彼の、「お母さん、ぼくのことちゃんと見ててね」という、無言のメッセージだったのかもしれない。そして、それは大成功だった。
  
ところで、え? タイトルの「スノット」? ああ、これはですね、英語で鼻くそのことをスノット(snot)といいますねんわ。


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