味オンチ

イギリス生活よもやま話【エッセイ】

プロフィール

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Teeka(フリート妙子)。イギリス人と結婚して、イギリス南東部に住んで、15年が過ぎました(はっや〜い!)。
夫とのなれそめは、よくある話なんですが、彼がわたしの英語の先生だったことです。
静かな海辺の田舎町で、教師を退職した父ちゃん(夫)と、ふたりで暮らしています。

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味オンチ

【どうしょうもない】
  
「うわああ、なんだ、こりゃ」
わたしがアイロンかけをしていると、突然、台所から、叫び声が聞こえた。まーたオットットが、しょうもないことで大騒ぎしているなと思いつつ、行ってみると、

「腐ってる、腐ってる」
と、目をくりくりさせて、ボウルを指差して、わめいている。
  
ロンンのチャイナタウンに行ったときに買ってきた干椎茸を、水を入れ
たボウルに入れて、もどしていたのだ。
「腐ってなんかないって。これは椎茸をもどしてんの。シ、イ、タ、ケ。ドライド・シイタケ・マッシュルーム。わかった?」
  
「臭いっ!」
「なにが臭いの。いい匂いじゃない」
「はやく、それなんとかしろよ。台所中が、臭くなるじゃないか」
ったくもう。これだから、イギリス人はどうしょうもない。
  
日本の食品で、イギリス人が耐えられない匂いは、いろいろとある。日本で一年暮らしたイギリス女性が、こういった。
「日本のコンビニは便利だけど、あの匂いだけは、耐えられないわ。行くたびに、ヘドが出そうだった」

わたしは何のことか、さっぱりわからず、とことん詳細を聞き出して、やっと、彼女が、おでんの鍋のことをいっているのだと、わかった。
  
カツオブシもダメ。スルメやノシイカときたら、もう言語道断、横断歩道である(これは、他のヨーロッパ人もダメらしい)。食べる以前に、もう匂いがダメだというのだ。納豆も論外。もちろん、なかにはそういうものを食べるイギリス人もいるが、あくまでもそれは、例外的な少数派である。
    

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よく日本人から、「お宅では、食事はどんなものを食べるのですか?」という質問を受ける。イギリス料理と和食が半々、と言えれば、国際親善和気あいあいの、理想的環境だが、現実の台所情勢というもんは、そんな甘っちょろいもんじゃござんせん。食をめぐる紛争は、たびたび勃発する。
  
そもそもの問題は、イギリス人という国民が、食に興味がないという点に起因する。つまり、食いしん坊じゃないから、「ん? どんな味かな?」という興味がわかない。だから、新しい食べ物にトライしょうという気が、ない。

知らない食べ物は怖いので、子供のときから知っている味だけを、安心して食べる。こんな国民の料理が、うまかろうはずがないのだ。
まったく、どうしょうもない

(もちろん、食に興味のあるイギリス人も、いらっしゃいます。ここで述べているのは、そういう人が多い、という一般論であります)
 
イギリス人が、いかに食に興味がないかは、おなじヨーロッパ人であるフランス、イタリア、スペイン人とくらべてもよくわかる。これら地中海沿岸の国々では、魚屋の店頭にイカやタコが並んでいる。そしてレストランのメニューには、イカやタコの料理が載っている。
  
ところが、イギリスは、四方を海に囲まれた島国というのに、魚屋でそれらを見ることはほとんどない。イカは、店員にいえば、奥の冷凍庫からカチンカチンに凍ったのを、出してくれる。

が、チョイスはない。モンゴウイカだろうとヤリイカだろうと、大きかろうが小さかろうが、そこにあるものを買うしかないのだ。
  
イギリス人は、タコを食物とは思っていないので、レストランのメニューにそれを見出すことはない。メニューにあるとすればイカだが、それもせいぜい、イカリングのフライぐらいのものだ。
  
イギリス人がよく食べる魚は、タラとヒラメとサケ。この国には、塩干物がない。魚の加工はもっぱら缶詰や燻製で、サケ、サバ、イワシ、ニシンぐらいのもの。

生まれてまだ一度も、牡蠣を食べたことがないという、中年のイギリス人に、何度か出会った。見てくれが気持悪いから、食べようという気にならないのだそうな。

    
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食に興味がなければ、味にも鈍感になる。
カートン入りのオレンジジュースの味が、イギリスとスペインでは違うのに、オットットは、その違いがわからないという。(もちろん、スペインのほうがおいしい)
  
手作りのカレーも、レトルト食品のカレーも、おなじようにおいしいといって食べるのだから、どうしょうもない。料理をつくる側としてはもう、アホらしいだけ。だからわたしは、自分がおいしいものを食べたいときだけ、手間をかけてつくり、あとは手を抜く、鬼嫁になりつつある。
  
ただ、味オンチにもたったひとつ、良いことがある。
グルメではないから、こんなもんが食えるか、どわっしゃーん! とテーブルをひっくり返す、星一徹現象は起きない。
  
粗食にも、文句もいわず、よく耐えてくれる。何もないときは、イギリスの代表的スナックであるビーンズ・オン・トーストで誤魔化せる。これはトーストの上に缶詰のビーンズ(豆を煮たもの)を乗っけただけの、手抜き料理選手権では、優勝まちがいなしの手抜き料理である。
  
また、トーストの上にポーチドエッグを乗っけて与えておけば、オットットは、、
「ぼくちん、これ好きなんだもんね♪」
と嬉々として食べてくれる。
どうもこれは彼にとって、ビーンズ・オン・トーストよりは上等の「おふくろの味」らしいのだ。
  
手間いらずで安あがりで、じつに良い亭主である(日本人の夫なら、こうはいかないだろうなあ)。天国にいるお義母さん、感謝いたしますぞ。



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