航空会社

イギリス生活よもやま話【エッセイ】

プロフィール

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Teeka(フリート妙子)。イギリス人と結婚して、イギリス南東部に住んで、15年が過ぎました(はっや〜い!)。
夫とのなれそめは、よくある話なんですが、彼がわたしの英語の先生だったことです。
静かな海辺の田舎町で、教師を退職した父ちゃん(夫)と、ふたりで暮らしています。

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イギリス生活よもやま話【ブログ】

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航空会社

【目からウロコのエアライン】  
 
イギリスに、イージージェットという航空会社がある。
この会社は、ヨーロッパ圏内の超格安フライトを、専門としている。

ここのチケットは、たとえばロンドンからマドリッド、ヴェニス、コペンハーゲン、またはウィーンまで、オール三千五百円均一(片道)などという、超破格値のオファーがある。
  
セーターの安売りじゃあるまいし、まさか、そんなぁ……と思うでしょう? ところがホントなんです。もちろん、これはバーゲン価格だが、じつはこんな怪しげな安値の裏には、ちゃーんと、わけがあるのだ。

それは、いっさいのフリル(余分な飾り)を排除して、すべてを簡略化したから。このエアラインをはじめて利用すると、目からウロコがポロポロと、まず十枚は落ちる。
  
オンラインでフライトの予約すると、その時点でコンファーム(確約)され、確約番号を記したメールが、送られてくる。これで手続が、すべて終了!

普通の航空会社の場合は、チケットが郵送されてきて、それをチェックインのときに渡して搭乗券をもらう。ところがイージージェットはチケットを発行しないので、チェックイン時に確約番号を言って、搭乗券をもらう。

(注 : 現在は、たいていの航空会社が、e-チケットになっているが、2003年当時は、画期的なシステムだった)
  
わたしは、長い番号を書き取るのが面倒なので、送られてきたメールを、プリントアウトする。すると、そこにはフライトナンバーやフライトスケジュールなど、すべての必要な情報が入っているので、この紙一枚をチケット代わりに持って行く。
  
チケットを廃止することによって、チケットの紙代、印刷代、封筒代、切手代などの、諸経費が節減されるというわけだ。はい、これに座布団一枚、じゃなくて、目からウロコが一枚。
  
経費節減の最たるものは、なんといっても機内食だろう。なんと、この飛行機では、食べ物がいっさい出ない。飲み物はおろか、アメ玉ひとつ出やしない。しかも、出ないどころか、欲しけりゃ売ってあげるから、買いなさいというのである。はい、ここで座布団三枚。いやいや、ウロコが三枚落ちる。
  
いや、しかしまあ、これでいいんじゃないの? ヨーロッパ圏内のニ、三時間のフライトに、食事などいらないし、機内食なんて、そうおいしいものでもないから、そのぶん安くしてくれた方が、こっちはうれしい。
  
  
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先日、ロンドンから南スペインのマラガに飛んだとき、イージージェットを利用した。ふと、搭乗券を見ると、座席番号がない。あるのは、搭乗の順番を決める整理番号だけ。

乗り込むと、スチュワーデスがいった。
「どうぞ、好きな席にお座りください」
はあ〜、自由席の飛行機なんて、はじめて乗ったワ。
  
真ん中に通路があり、座席は両側にそれぞれ三席づつ、全部で百五十席ほど。機内には、VTRのモニターがないので、もちろん映画はないが、非常用設備の説明なども、昔ながらにジェスチャーでやる。客室乗務員は、ふたりのスチュワーデスに加えて、スチュワードがひとり。
  
座席のポケットには、ふつうならその航空会社の機内誌が備えてあるが、それもない。あるのは、緊急時の説明パンフレットと、ゲロ袋のみ。離陸して、シートベルト着用のサインが消えると、スチュワーデスが機内誌を持って回る。読みたい人だけが、それをもらって読むのだ。
  
スチュワーデスの制服は、半袖のシャツブラウスとスラックス。スカートもあるようだが、このときは、全員が、ジーンズのようなステッチのあるコットンバンツを、はいていた。

スチュワーデスの仕事は、実際にはスカートよりもスラックスの方が適している。不時着などの可能性を考えれば、むしろ、制服はスラックスにすべきかもしれない。
  
彼女たちのメイクは、あれ? スッピン? と思うくらい薄化粧である。わたしは、日本のエアラインのCAをしている友達(といっても、わたしは彼女の母上の方と歳が近いのだが)のYちゃんの話を、思い出した。
    
彼女は、乗務のときは、いつも早起きして、自分としてはめいっぱいの《京劇メイク》で臨むのだが、それでもチーフパーサーから、ちゃんと化粧しろと注意される。

「この上にま〜だ顔のことをいうかあ〜」と、内心ぎりぎり歯軋りしながら、塗り足すのだそうな。彼女はもともと色白美人なんだから、ほとんど化粧は、いらないんだけどなあ。
  
わたしは、このYちゃんを、一度イージージェットに乗せてみたい。そしてとなりで、落ちてくるウロコの数をいちま〜い、にま〜い、さんま〜い……って、あたしゃなにかい、皿屋敷のお菊さんかい。
  
  
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さて、マラガ行き自由席ボーイング737の出発時刻が迫ってきた。
「皆さーん、はやく席についてくださいね。全員が席につき次第、
出発しまーす」
と、これが機長からのご挨拶。

あのね、バス旅行じゃないんだけどネ。
いたってリラックスした雰囲気のなか、機は、デパーチャータイムどんぴしゃで、出発した。
  
水平飛行に入ると、読みたい人だけに、機内誌が配られた。そのあと、列車の車内販売のようにカートを押して、サンドイッチ、クロワッサン、お菓子、飲物などを、売りに来た。貨幣はポンドとユーロ、いずれもOK。
  
飲み食いした後は、もちろん普通のエアラインでもゴミを片づけに来るが、イージージェットの場合は、
「えー、ゴミ。ゴミはこちらへ。ゴミ〜、ゴミ〜」
と、むさ苦しい大きなゴミ袋をむきだしで、通路を歩く。

ただ、このプラスティックのゴミ袋が、イージージェットのカラーとおなじオレンジ色、ってところがご愛嬌である。
  
この機内では、免税品の販売はない。だいたいが、イージージェットに乗るのは貧乏人ばかりだから、どうせ儲けにはならんと、読んでいるのだろう。
  
そうこうしているうちに、二時間が経ち、機はマラガに近づいた。乗務員が、機内誌を回収して回る。ふつうのエアラインのように、機内誌を
座席に放ったらかしたり、ポケットに突っ込んだりしては、アキマヘン。
  
このあともう一度、あのオレンジ色のゴミ袋を提げての、ゴミ回収があった。これをかなり徹底してやる。乗客は、自分の座席のまわりにある不要なものを自分で片づけ、ゴミ袋に入れる。

通常のフライトに慣れた目で見れば、へーえ、乗客にゴミを片づけさせるかあ、そこまでやるか、という思いがチラと胸をよぎる。
  
機がタッチダウンした。
「本日はイージージェットをご利用いただき、ありがとうございました。当機は、ただいまマラガ空港に到着いたしました。現地の気温はなんちゃら、かんちゃら」
という通常のアナウンスのあと、こんなセンテンスが聞こえてきた。
  
「当機はただいまより三十分後に、ロンドンに向けて出発いたします。皆様のご協力、ありがとうございました」
  
ええーっ、三十分で折り返し運転?
これはちょっと驚きだ。三十分といえば給油してぎりぎりの時間じゃないのか?
  
……なるほどねえ、そうだったのか。
たった三十分でロンドンに引き返すのなら、そりゃ、清掃している暇はないわ。

いや、なかには、あれだけ集めて回っても、まだゴミを残しているアホの乗客がいるだろうから、清掃はするのだろう。しかし、その時間をできるだけ短縮するために、乗客の協力が必要なのだ。
  
そうかあ、ハードスケジュールなんだなあ。乗務員も、大変なんだなあ。いやいや、そういうことであれば、ゴミの片づけなんて何でありましょう。よろこんで、ご協力いたしますです、ハイ。
  
  
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アンダルシアの太陽のもと、二週間のホリディを楽しんで、あーあ、暗くて寒いイギリスなんか帰りたくないよう、ここに住みたいよう。と寝言をほざきながら、後ろ髪引かれる思いで、空港へ向かった。
  
帰りの便では、ひょうきんなスチュワーデスがいた。
離陸してしばらくすると、アナウンスが流れた。

「ただいま、シートベルト着用のサインが消えました。どうぞご自由に席をお立ちになって、もっと素敵な人の横へ移動なさって結構です」
ククククと、客席から笑いが漏れた。
  
二時間半のフライトの後、ロンドンに着いた。そして機が滑走路にタッチダウンしたとたん、すかさずアナウンスが入った。

「あ、あ、あ、ダメですよ〜、皆さま。まだベルトはずしちゃダメ。ほらほら、そこのあなた、はずしたでしょう。ちゃーんと見てますよ」
わっはっはと、客席は大爆笑。
  
うーむ、この調子だと、パイロットはベースボールキャップをかぶって、Tシャツで運転(このエアラインの場合は「操縦」というより「
運転」の方がピッタンコ)してるんちゃうか。

キャプテンが、ガムをくちゃくちゃやりながら、「ハーイ!」なんてやってたら、どないしょう。ちょっと心配になって、降りる時、そっとコックピットをのぞいたら、服装もちゃんと普通のパイロットだったので、ホッとした。
  
一般常識としてのフライトというイメージを、完璧に打ち破ったサービスだが、うん、これはいい。ほうらね、余分なものを削れば、こんなに安くできるじゃないか。それに、気どりのない雰囲気は、とてもリラックスできる。
  
というわけで、わたしはヨーロッパではもっぱら、この貧乏人御用達イージージェットを愛用している。


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