勉強机

イギリス生活よもやま話【エッセイ】

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Teeka(フリート妙子)。イギリス人と結婚して、イギリス南東部に住んで、15年が過ぎました(はっや〜い!)。
夫とのなれそめは、よくある話なんですが、彼がわたしの英語の先生だったことです。
静かな海辺の田舎町で、教師を退職した父ちゃん(夫)と、ふたりで暮らしています。

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勉強机

【勉強机がいらない訳】
  
先日、茨城県の女子高校生から、メールが届いた。彼女は、学校でやっているプロジェクトの一環として、イギリスの生活習慣について、調べている。ついては、いくつかわからないことがあるので、教えてほしいという。
  
ほいほい、何でしょうか、とその質問を見ると、こういうのがあった。
《イギリスには勉強机がなく、勉強はリビングでするそうですが、なぜ勉強机がないのでしょう?》
  
勉強机がない?
あー、そうだった。そういわれて、初めて気がついた。

なにしろ、うちには子供がいないので、「勉強机」などという言葉は、すっかり忘れていた。そういえば、わたしが昔ステイしたホストファミリーの家でも、小学生の子供部屋に、勉強机はなかったよなあ。
  
で、この質問の回答として、わたしは、《もちろん、勉強机のある家もあるが、ない家の方がずっと多い。それは、日本のような詰込み教育をしないので、家で勉強する必要がないから》という意味のことを、書いて送った。
  
要は、勉強しないから机がいらない、ということなのだが、イギリスの子供が、日本とくらべてどれくらい勉強しないか、それをちょっとご披露したい。
 
と、ここまで書いたら、電話が入った。となり町に住むN子さんが、珍しく大根が手に入ったし、借りている帽子を返しに行きたいが、これから行っても良いかという。

どうぞ、どうぞ。それに、うひょー、大根がやってくる。イギリスではめったに手に入らない大根、ああ、この前それを食べたのはいつのことだったろうか……と、受話器を置いて、遠い目になるわたしであった。
  
  
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大根と帽子を手に、ダダダダダとやってきたN子さんは、庭のテーブルにすわるなり、
「ほーんとにもう、勉強なんかしやしないのよ」
と、ひとしきり子供の学校の話をしたあと、またダダダダダと帰って行った。

小学生の子供二人を持つ彼女は、毎日毎日、子供の学校への送迎があ
るから、忙しいのである。日本では、親が子供を送迎するのは幼稚園ぐらいだろうが、イギリスでは、小学校を卒業するまでやらなくてはならない。いやはや、イギリスのお母さんはホンマ、大変です。
  
勉強なんか、しやしないのよ――
それは、彼女の子供だけのことではなく、学校全体のことなのだ。7月20日過ぎから夏休みになるが、そのニ週間前からもう、学校も生徒も、さまざまな行事で浮かれっぱなしで、授業どころではないのである。

いや、行事のあいまに授業があることはあるが、こちらの学校は、七月が学年末でもあるし、暑いし(日本よりはずっと涼しいんだけどネ)で、生徒が授業に集中しないのだそうな。
  
夏休みの二週間前から、遠足だの運動会だの、オープン・デイ(学校を一般に公開する日で、文化祭に似ている)だの、ディスコ(学校が主催する!)だのがあったりする。

N子さんの上の男の子が、オープン・デイの催しのミュージカルに出演したのだが、その衣装として、ストロー・ハットがいるというので、わたしの帽子を貸してあげた。貴重な大根は、そのお礼らしい。
  

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滞英十二年になるN子さんの意見によると、勉強机がない理由は――
まず、歴史的、社会的背景の影響があるのではないか。英語の"study"という言葉は、「勉強」と「書斎」という、二つの意味を兼ねている。そして、イギリスは階級社会である。

このことからわかるように、昔は、勉強は、書斎が持てる階級の人がすることであって、庶民は、勉強なんぞよりは、早くから働いて、食い扶持を稼ぐことの方が大事だった。だから、庶民に勉強は、無縁であった。
  
つぎに、リビングのテーブルで勉強することについて、彼女は、子供が
親の目の届くところにいてくれる方が、安心だという。むしろ、子供が自分の部屋に閉じこもることの方が、怖い。リビングで、子供といっしょに本を読んだりすることが、イギリスでは理想的な姿なのだろう。
  
さらに、教育方針が違う。教育とは知識を詰め込むことではなく、子供の個性を伸ばすことだという、大前提がある。
ここで先ほどの、イギリスの子供が、日本にくらべていかに勉強しないか、という話だが――
  
イギリスでは、ランドセルに教科書、ノート、筆箱などを詰めて登校する子供の姿はない。手にしているのは、学校のロゴの入った、薄っぺらなビニールのバッグだけ。お昼は、給食か弁当かを選択できるので、給食を取らない生徒は、弁当を持参する。

日本のような教科書はなく、教材は、筆記用具にいたるまで、学校にあるものを借りる。だから、授業が終れば、それを学校に置いて帰る。家に教材を持ち帰らないので、復習だの予習だのはしない。
  
宿題はあるが、「本を読んでくること」などいった程度のもの。その場合は、副読本を借りて帰る。参観日はなくて、年に二回、親と教師との懇談会があるだけ。通知表は年に一回、学年末にもらう。夏休みなど、宿題はいっさいなし。
  
わたしがイギリスに来て驚いたのは、ハーフタームというシステムだ。これは、各学期の半ばにある、一週間の休暇のことである。
子供に休暇だってえ?
あーあ、日本じゃ中間試験の最中というのに、イギリスじゃ、その時期に、すべての学校が、一週間休校になる。もちろん宿題はない。なんという違いだろう。のどかなもんだ。
  
各学期にハーフタームがあるから、夏、冬、春の休み以外に、年間にすると三週間の休みがある。しかしこれだけ休みがあると、親にとってはあまり嬉しくない。どこかに遊びに連れて行けと、子供にせがまれる。そこで親も休暇を取って、旅行に行く家族も多い。
  
でも、ちょっと困るんだよな、それ。それを見越して、ハーフタームの時期になるとクリスマスやイースターと同様に、フェリーやユーロトンネル、飛行機の運賃がいっせいに値上がりするのだ。だからわたしは、その時期の旅行は避けている。

というわけで、多い休みに少ない勉強時間。ま、これなら勉強机はいらないや。


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