白人コンプレックス  

イギリス生活よもやま話【エッセイ】

プロフィール

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Teeka(フリート妙子)。イギリス人と結婚して、イギリス南東部に住んで、15年が過ぎました(はっや〜い!)。
夫とのなれそめは、よくある話なんですが、彼がわたしの英語の先生だったことです。
静かな海辺の田舎町で、教師を退職した父ちゃん(夫)と、ふたりで暮らしています。

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イギリス生活よもやま話【ブログ】

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白人コンプレックス  

【熱烈歓迎ベカムさま】
  
梅雨のないイギリスの6月。さわやかな潮風を浴びながら、わたしは買物帰りに、マーゲイトの、海沿いの遊歩道を歩いていた。そのとき、ばったりと、スンジュンに会った。

韓国人のスンジュンは、わたしの友人ユジンのご亭主である。やあ、ひさしぶり、なんて挨拶もそこそこに、すぐに彼の手が、わたしの持っている買物袋に伸びる。

「タエコ、それ貸して。持ってあげるよ」
  
くーっ、これだからなあ、ヨーロッパ育ちの男は。女性の荷物を持ってやったり、寒ければ、自分の上着を脱いで着せてやったり。そういうことを、サッと照れずにやる。

そういう、ヨーロッパ式マナーを身につけてる東洋の男に、あたしゃ、弱いんです。たぶん、日本人から見れば、そういうのは、「とんでもなくキザな野郎」ってことに、なるんだろうけど。
  
スンジュンは、どこから見てもまちがいなく、モンゴル系東洋人なのだが、父親の仕事の関係で、ヨーロッパで育った。 韓国語、フランス語、英語を自由に操るところが、じつに憎たらしい、というか、うらやましい。

このとき彼は、自分が両手に荷物を持っていたのに、さらにわたしの袋を持とうとするので、丁寧にご辞退申し上げた。
  
家の方向が同じなので、ならんで歩きながら、最近日本に行ったデヴィッド・ベカム(本国では、ベッカムじゃなくて、ベカムと発音します)の話になった。

「ゆうべのテレビ、見た? ニュース特集でやっていただろ」
「見た、見た。マーティン・アシャーまでが、ベカムを追っかけて行ったんだねえ」

マーティン・アシャーは、故ダイアナ妃やマイケル・ジャクソンをイ
ンタビューした有名ジャーナリストである。彼が、ベカムの取材に、わざわざ日本に行ったことには、ちょっとびっくり。
  
イギリスの追っかけ報道陣は、ベカムのレアル移籍決定後の第一声を取材したかったのだが、日本のエージェントは、会見で海外の報道陣を、一切シャットアウトしてしまった。だから、ベカムを遠くから望遠レンズで追い、日本の熱狂歓迎ぶりを取材するしか、なかったのだ。
  
そうなると、話題はもう、プロモーションの話しかない。ベカムが、日本のCMで総額10億円を越える金を稼いでいるだの、ベカムの出ているCMがなぜ日本の世界的企業じゃなくて、聞いたこともない名前の企業なんだ、などという記事が、新聞を賑わせていた。
  

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地球の反対側から、日本のベカム・フィーバーを見ていて思うことは、日本人の、白人コンプレックスである。特に、エステティックのCMで、4億円の金儲けなんて、日本女性の白人崇拝に乗っかったものではないかしらん。

ソウルの大学で経済学を教え、今は休職して、PHD(博士号)取得のための論文を書いているスンジュンは、そんな日本人の白人崇拝を、かなり冷ややかな目で見ている。
  
しばらく前の話だけど――とことわって、彼は、こんな話を聞かせてくれた。彼が、ベルギー(フランス語圏の地域)に住んでいたとき、フランスのテレビのトーク番組に、往年の映画俳優であるアラン・ドロンが出演した。

その頃すでに、ドロンは、フランスでは過去の人であり、「あの人は今」的興味で、テレビに引っ張りだされたのだろう。その番組で、アラン・ドロンは、こう言ったそうだ。

「日本に行けば、俺だって、まだまだ金儲けができる。懐が淋しくなれば、ちょいと日本に行くのさ」
  
なんだい、そりゃ。
そういえば、そうそう、思い出した。彼は日本で紳士服のコマーシャルに出ていたっけ。

ヨーロッパではもう、誰も見向きもしない「太陽がいっぱい」を、日本ではいまだに、リバイバル上映するという事実が、彼にそんな奢ったセリフを、吐かせるのだろう。
  
ドロンだけではない。昔、「雪が降る」「サン・トワ・マミー」などのヒットを飛ばして有名になった、ベルギーの歌手アダモ。彼もまた、トーク番組で、ドロンと似たようなことを、言ったそうである。
  
「あいつらが、そんなことを言ってるなんて、日本人は知らないだろ? ヨーロッパ人は、日本を金づるとしか、見てないんだぞ。ヒャッハッハ」
スンジュンは皮肉を込めて笑う。わたしは反論できない。だって、うーん、ま、ぶっちゃけた話、そうかもしれないなあ、と思ってしまうから。
  
スターは聖人でもないし、誰だってお金は欲しい。イギリスに暮らして、わたしたち黄色人種が、白人よりワンランク下に見られているという事実は、経験してきた。だから、やっぱり、そうなんでしょう、ぶっちゃけた話。
  
  
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ひと昔前、いや、ふた昔も前になろうが、若かったアラン・ドロンが来日して、ちょうどベカムと同じようなことをやっていたのを、映画雑誌で見た記憶がある。例の「日本の子供たちとの交流」とかいうヤツ。
  
アラン・ドロンは、わたしの記憶違いでなければ、施設のようなところを訪問して、プレゼントを配ったと思う。子供たちに囲まれて、ホロリと涙する写真が、載っていた。

――おいおい、ほんまかいな。さすがは役者やなあ。
あ、いや、わたしは別に、ドロンが嫌いなわけではない。でも、それが正直な感想だった。
  
彼の涙は、本物だったかもしれない。だが、それが、プロモーションの仕事で金儲けに来た、若くて美貌の人気スターが、発展途上国の貧しい子供たちに涙する――そういうシーンに見えてしまうのは、どうしても避けられなかった。
  
信じられないだろうが、今でも、日本を第三世界と認識している西欧人は、いくらでもいる。ましてや、それが三、四十年前なら……。そして、同情が常に優越感と背中あわせにあるのは、周知のこと。
  
わたしはベカムに関心もないけれど、また、嫌う要素もない。ハンサムでセクシーだし、麻薬をやるわけじゃなし、家庭では良い父ちゃんだし。
  
でもね、彼が落ち目になったとき「日本に行けば、金儲けができる」なんてことは、言わせたくないんだよね、日本人として。とはいえ、まあ、あれだけ日本でちやほやされりゃ、無理かしらん。


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