マイケル・ジャクソン

イギリス生活よもやま話【エッセイ】

プロフィール

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Teeka(フリート妙子)。イギリス人と結婚して、イギリス南東部に住んで、15年が過ぎました(はっや〜い!)。
夫とのなれそめは、よくある話なんですが、彼がわたしの英語の先生だったことです。
静かな海辺の田舎町で、教師を退職した父ちゃん(夫)と、ふたりで暮らしています。

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マイケル・ジャクソン

【どこへ行く、マイケル・ジャクソン 】

人っ子ひとりいない夜の遊園地――
色とりどりのイルミネーションを点滅させながら、ゆっくりと回る大観覧車。満艦飾のメリーゴーラウンド、そして、ゴーカートのコース。

ここにたったひとりで来ては、失われた時を取り戻すかのように遊ぶ44歳の男 。
  
ドキュメンタリーは、こんな寂しい光景で始まった。
マイケル・ジャクソンの私生活を、8ヶ月にわたって密着取材した特別番組が、イギリスのテレビで、放映された。

取材したのは、かつて皇太子と別居中だったダイアナ妃をインタビューして一躍名を馳せたマーティン・バシャーで、この番組をイギリスでは1500万人が、そしてアメリカでは2700万人が観た。
  
取材のほとんどが、マイケルの自宅(というより居城というべきか)である「ネバーランド」というエステイトで行われた。その名が象徴するように、屋敷には、ピーターパンの像がそこかしこに飾られ、まるで小さなディズニーランドという様相を呈している。
  
面積が、甲子園球場の306倍という敷地に、森、湖、映画館、遊園地、動物園などがある。遊園地も、本物と変らぬフルサイズなら、動物園も、ライオン、トラ、キリン、象(親友のエリザベス・テーラーから寄贈されたもの)などを飼育する、本格的なものである。
  
なぜ44にもなる男が、ピーターパン願望?
なぜ自宅に遊園地を? 動物園を?
そして、彼はなぜあんなにも顔を変えたのか?
ジャクソン・ファイブで歌っていたあの子に、いったい何があったのだろう。
  
不可思議を埋める糸口が、映像とインタビューを通して、引き出されていく。相変わらずの静かで優しいしゃべり方だが、その笑顔は文字通り引きつって見える。顎、頬、鼻の整形、もしくはフェイスリフトから来る皮膚の引きつりだろうか。


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マイケルの行動が異常だとすれば、それは異常な少年時代に起因する。
12歳で2500万円の印税を受け取る子供が、いったいどこにいるだろう。

コンサートツアーで、旅から旅への生活。同室に女の子を連れ込む兄の性行為を、マイケルは眠ったふりをして耐えなくてはならなかった。このことが小さな少年の情操にどんな影響を与えたか……。
  
彼はジャクソン・ファイブのメンバーとして5歳のときから舞台に立っている。つまり、遊ぶことがなにより大切な時期に、働かされているのだ。

父親は、この5人の子供に厳しい稽古をさせ、歌詞やダンスのステップを間違えると、革のベルトで死ぬほど殴った。兄弟たちにとって稽古は《恐怖》そのものだった。
  
「レコーディングのとき、スタジオの向こうに公園があってね。いつも、そこで子供たちがサッカーや野球をしていて、その声が聞こえてきたんだ。ぼくは、必死で涙を隠さなきゃならなかった」
  
子供のころにだれもが経験するいっさいが、彼にはなかった。野球も、遊園地も、動物園も。失ったものを今、必死で追い求める彼を、だれが嗤(わら)えるだろうか。

略奪された子供時代のために、永遠に大人になれない。ぼくはピーターパンだと語るマイケル。そこにあるのは、トラウマにうちのめされた、アダルト・チルドレンの姿である。
  
  
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あの小さな可愛いマイケルが思春期にさしかかって、当然ながら顔が変る。もう可愛くもないニキビ面。子供のスターの多くがここでつまづく。彼の鼻を「デカい」、「低い」、と罵倒する父親によって植え付けられたコンプレックスの、根は深い。
  
「舞台でスポットライトを浴びながら、自分の顔が耐えられなかった。仮面を被れたらどんなにいいだろうかと……」
ここから、彼自身の肉と骨を削っての仮面づくりが、始まった。
  
1982年、「スリラー」の大ヒットで、アルバム売上げ史上最高の5千万枚という記録を樹立し、エルビス・プレスリー亡きあとのポップス界で、キングの座に君臨した。これを機に、彼の顔は、本格的な変貌を遂げていく。
    
白粉をはたいたかと思うほどに白い肌について、自然とそうなったという苦しすぎる言い訳をしているが、おそらくスキン・ブリーチング(皮膚の 漂白)だろう。そのために、彼は陽のあたる戸外では黒い傘をさしている。
  
入墨によるアイライン。眉もおそらくそうだろう。いやに赤い唇も、口紅ではなく、外科的な処置だろう。鼻の穴は、逆さになったV字型。これ以上メスを入れると鼻としての機能を失うという、限界ぎりぎりまで改造された鼻は、美しいどころか、奇怪としか言いようがない。


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才能あるエンタテイナーとしてのマイケル・ジャクソンを、わたしは好きである。しかし、ドキュメンタリーを観終わって、どんよりとした不安が停滞する。
  
テレビの前の視聴者を驚かせた、あの場面――ぬいぐるみがいっぱいの自分の寝室に子供を招じ入れて「お泊り」させる。
まだやっているのか――。
  
マイケルは、孤児院などの施設の子供たちを、自宅に招待する。それはいい。ネバーランドは、子供にとってはパラダイスだ。しかし、彼はその子供たちを自分の寝室に泊めて、鍵をかける。「セクシャルなことは、何もない」と彼はいう。
  
1993年に、彼はチャイルド・アビューズ(児童性的虐待)事件を起こしている。13歳の少年と性交渉を持ったかどで、少年の親に告訴されたが、23億円の示談金を払って和解した。

その前科があるだけに、それがただの「お泊り」かどうかの疑惑があり、ロサンゼルス警察も注視の眼を向けている。
  
エルビス・プレスリーの娘との最初の結婚に破れたマイケルは、皮膚科の看護婦と再婚して、ふたりの子供(6歳と4歳)をもうけて離婚。そして今、代理母による三人目の子供を抱き、神経質な貧乏ゆすりをしながらミルクを与える、彼の日常が映し出された。
  
三人の子供たちは、公共の場に出るときやカメラの前では、頭からベールを被ったり、カーニバルの仮面をつけたりしている。これは誘拐防止対策だろうが、不自然な環境で、一般の子供たちと交わることなく、しかも心を病む父親に育てられる子供たちは、この先どうなっていくのか……。
  
あの事件以来、マイケルのアルバムの売上は、下降を続けている。浪費による225億円の借金をかかえる身で、このままの生活を続けていけば、子供たちが成人するまでに彼の270億の資産は底をつくという。

三人の子供たちとともに、マイケルはどこへ行こうとしているのだろうか。


(No.8 2003/4/19 )

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