サマータイム

イギリス生活よもやま話【エッセイ】

プロフィール

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Teeka(フリート妙子)。イギリス人と結婚して、イギリス南東部に住んで、15年が過ぎました(はっや〜い!)。
夫とのなれそめは、よくある話なんですが、彼がわたしの英語の先生だったことです。
静かな海辺の田舎町で、教師を退職した父ちゃん(夫)と、ふたりで暮らしています。

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サマータイム

【サマータイム】

三月の最後の日曜日――
朝起きてパソコンを立ち上げたら、いつもと違う、見慣れぬ画面が現れた。
おりょ? なんだ、こりゃ?
  
青い画面の真ん中に小さな窓がひとつ。そこにはこう書かれていた。
《夏時間の調整のためにシステムクロックが更新されました。新しい設定が正しいか、確認してください》
  
あーっ、そうだった。きょうからサマータイムなんだ。
画面の確認ボタンをクリックすると、アナログの時計の絵が出てきた。針は十時五分を指している。部屋の時計はまだ九時五分。
  
ほほう、なんと賢いパソコンなんだろう。日本から持ってきたラップトップなのに、ちゃーんとイギリスのサマータイムを教えてくれる。そして十月にサマータイムが終ったときにも、「時計をもとに戻さなあきまへんでー」と教えてくれるのである。
  
もちろん、自分が「教えてちょーだいね」という設定をしておいたから教えてくれるのだが、いつからサマータイムが始まって、いつ終るという情報を入力した覚えは、ない。ただ「自動的に夏時間の調整をする」のところをオンにしただけだ。
  
ということは、パソコン内の時計は電波時計なのか? え? でもでも日本とイギリスでは周波数が違うんじゃ……? 衛星電波を使うからよいのか? いやいや、パソコンの時計は正確じゃなかったぞ。

うーむむむ、メカオンチのわたしがこういうことを考えると、すぐにオツムがオーバーヒートしてしまうので、いかんいかん。深く考えずに軽い人生を生きなくては。
  
わが家にはもうひとつ、自動的に夏時間調整をしてくれる時計がある。それはビデオレコーダーに搭載されている、これは正真正銘の電波時計。電波を受信して内部の発信機の誤差を修正し、常に正確な時間を出力する。したがって誤差は十万年に一秒だそうな。

まあ、人生ってそんなに正確に生きなくてもいいと思うけど、時刻修正が不要な時計が家庭にひとつあるのは、便利でありがたい。

 
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Summer time and the living is easy......
  
古いジャズにこんな歌がありましたよね。
けだるく歌う黒人歌手の、曳きずるようなメロディを口ずさみながら、オットットとわたしは家中の時計を調整していく。この日のテーマソングとくれば、やっぱりこの「サマータイム」、これっきゃない。
  
オットットはマイクを持つふりをして、目を閉じて眉間にシワなぞ寄せて、すっかりカラオケ態勢で歌っている。おいおい、歌ってばかりいないで、時計を変えてくれよ、十五個もあるんだからサ。
  
そう、これがけっこう面倒なんである。腕時計を含めて、十五個の時計。アナログ時計は、針をちょいと動かせばよいので簡単だが、問題はいろんな機器についているデジタル時計だ。

たとえば電子レンジ、クッカー、オーディオ、ファックス、カメラ、車など。ええっと、どうやって変更するんだっけ。

本体を見ただけでは、皆目わからない。ごそごそと、それぞれの家電製品の使用説明書を引っぱりだして、それと首っぴきでひとつひとつ調整していく。

欧米を中心とする世界の約八十カ国の国民が、年に二回、このやっかいな作業に携わるわけだが、こんなこと、家庭用電子機器が世界で一番普及している日本なら、やってられまへんで、実際。
  
やっと調整を終えて、はい、これで日本との時差が八時間となりました。標準時なら、イギリスは日本より九時間遅れている。
  
  
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ところで、なにゆえにサマータイムがあるのだろう。
わたしが渡英したばかりのころ、「夏にむかって日がやたら長くなるから時計をグリニッジ標準時から一時間ずらすのだ」と聞いた。

ははあ、なるほど。そんなに日が長いのなら、時計を一時間遅らせて朝はゆっくりしよう。一時間遅れて通勤通学したって、どうせまだまだ日はたっぷりあるのだし。と、わたしはそう解釈した。

さすがだねえ、イギリス人は。日本人のようにセカセカしないで、ゆったり暮らそうというわけか。余裕だね。癒しだね。
  
ところが、ところが。
これがとんでもない間違いで、我ながらつくづく日本人の発想だよなあと苦笑した。もっともこれは、ひたすら朝寝がしたいわたしの個人的発想かもしれないが。
  
欧米人の考え方はまったく逆で、一時間遅らせるのではなくて、進めるのだ。つまり、そんなに日が長いんだから、一時間早く仕事を始めて早く終わると、その後の時間を太陽の下で遊べるじゃないか、というのである。
  
もともとは、第一次大戦中に、照明の燃料を節約するために導入されたサマータイムだが、今は完全に余暇を楽しむためのものだ。年に四週間の有給休暇を、誰もがきっちり消化することがあたりまえのこの国では、常に遊ぷことを考えている。
  
イギリス人は、ふつう残業なんてしないから、仕事は五時に終る。サマータイムの五時は、標準時では四時である。それから延々四、五時間は明るく、六月の夏至の頃には、日が暮れるのは十時を過ぎる。

となれば、アフターファイブの明るい五時間を、ガーデニングに費やすもよし、キャンプ道具を持って海岸に行ってバーベキューをするもよし。
  
多くのヨーロッパ人の人生の目的は、遊ぶことである。遊ぶために働く。働いたお金は全部、ホリディ(イギリスではバカンスのことをこういう)に費やして、貯金はゼロ。

このような、正しいイギリス生活をしているわが家の銀行口座は、みごとにスッカラカン。もしも何かあったときどうすんのよッ、と迫ると、オットットはまたもやマイク片手に歌いだした。
  
Que sera, sera! Whatever will be, will be
The future's not ours to see, Que sera, sera!

ケ・セラ・セラー、なるようになる、先のことなど、わからない



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