イギリス生活よもやま話【エッセイ】

プロフィール

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Teeka(フリート妙子)。イギリス人と結婚して、イギリス南東部に住んで、15年が過ぎました(はっや〜い!)。
夫とのなれそめは、よくある話なんですが、彼がわたしの英語の先生だったことです。
静かな海辺の田舎町で、教師を退職した父ちゃん(夫)と、ふたりで暮らしています。

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【昼下がりの情事】

いちゃいちゃ、いちゃいちゃ。
さっきから、もう。ここんとこ毎日これだもの。

彼の首のところに彼女は自分の頭をすり寄せて、いちゃいちゃ、いちゃいちゃ。彼の方も、すっかり、ふにゃらら顔でうれしそう。さんざんいちゃついたあげく、彼がパッと彼女の上に乗っかって、チュクチュクチュク。

[あっ、あんなことしてるー! やらしー! 見て見て]
どれどれと、オットット(うちの古亭主)が私の横に来て窓をのぞく。
「おーっ、ほんとだ、やらしー。昼間っからあんなことしてえ」

庭のリンゴの木の枝で、二羽の山鳩が交尾に励んでいる。ほんのりとピンクがかった淡い灰色の体、首のところには黒い輪がくっきり。そんな彼と彼女は、下から二番目のいつもの枝で、仲むつまじい。

ああ、春ですねえ。まだお日さまは雲の陰。あまり姿を見せてはくれないけれど、それでもわが家の裏庭では、黄水仙も咲きそろい、池にはカエルの卵がプッカリコ。まがうことなき春の訪れである。


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事件がおきたのは、そんなのどかな昼下がり。
庭仕事をしていたオットットが、血相を変えて駆け込んできた。

「魚がカエルに強姦されてるッ」
ええーっ、そんなのありィ?

魚というのは、小さな池で飼っている金魚のことである。赤いのやら、ぶちのやらが十匹ほど。体長十センチ余り、金魚としてはかなり大きい。

あわてて庭に出ると、なんと金トト姫は、発情マシーンと化した悪代官のエロガエルにおさえつけられて、あばれている。

「あれえー、助けてえー」
「ぐわははは、よいではないか。いやよいやよも、好きのうち。ええい、静かにせいっ」
ああ、金トト姫の純潔(昔はこういう言葉もありました)は風前の灯。

「こらあ、エロガエル、手を離せえ!」
キイキイ叫びながら捧でカエルをツンツンする私。そこへ颯爽と登場するは、網を片手の素浪人、その名も金魚掬井得意之介。

見事な網さばきで重なった二匹をすくいあげ、悪代官を姫の体から離そうとするが、カエルの奴、その手をグワシッと食い込ませて、驚くほどのパワーなのだ。指の一本一本をはがすようにして、やっとのことでカエルをひっぺがした。
 
金トト姫は赤いおベベの乱れた裾をなおし、得意之介に走り寄る。
「このご恩は一生忘れません。お礼に池の底の竜宮城へご案内しましょう。
さ、どうぞいらしてぇ〜」

そういって流し目をくれると、尾ひれをひらひらさせて池の底へと消えていった。思わず後を追う得意之介、その袖をむんずとつかんで私は引きとめる。
こらっ、金魚の色香に迷ってどうするっ。

カエルが金魚と交尾をする――。
こういうことが実際にあるのだ。もちろん、交尾が成立することはないように、自然という神さまがちゃーんと按配してるから、カエルと金魚のハーフが生まれることはない。

魚の飼育の本によると、交尾期のオスガエルは動いているものなら何でもしがみつき、その力が強いので、魚の頭を締めつけて殺してしまうこともまれにあるそうだ。

ということは、私も庭でうろうろしていると、カエルに貞操を奪われる危険性があるわけだ。気をつけなくっちゃ。


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そういえば、英紙タイムズにこんな話が載っていた。
ガマの社会もまた、交尾期にはメスをめぐっての激しい争奪戦がくりひろげられる。

メスというのはサイズの大きいほうが好きなのだ。あ、い、いや、私は体の大きさの話をしているのだ、もちろん。

ガマのメスが惹かれるのは、じつはオスの低い鳴き声なのである。低い声のオスに抱かれると、メスは「ああ、いいわ、いいわ」となるそうな。オスの体が大きくなればなるほど、鳴き声は低くなる。これが大きいオスがモテる理由である。

そこで、モテない体の小さい高い声のオスはどうするか。方法はある。たかが両生類のくせに、これはなかなかインテリジェントなテクニックといえよう。

面白いことに、魅惑の低音を作り出す要素がもうひとつある。それは体温が低くなればなるほど、鳴き声も低くなることだ。これを使わない手はない。

そこで小さなオスは、池で一番温度の低い中央に行って、じっとうずくまって体温を下げる。そうして、暗い所で後ろからメスに抱きつくと、メスは小さいオスとも知らず、「あら、低音の魅力のステキなお方。ああ、いいわ、いいわ」と抱かれることになる。

しかし、ここで話は完結しない。どの社会にも競争というものがある。みんながこぞって体を冷やそうと池の中央に集まってくると、必然的に縄張り争いが始まる。

そして、ここでも、結局は大きい者、強い者が勝つ。小さな弱いオスたちは、哀れ、池のほとりに追いやられ、その鳴き声はますます魅力を失う。いやはや、ガマ社会もなかなか大変なのである。

それでもまだ、種を絶やさぬために、神は弱き者に救いの道を与え給うた。とはいえ、これはテクニックなんてもんじゃないが、こうなったらもう低音の魅力なんぞクソくらえと、池のほとりの藪にひそんでメスを待ち伏せ、やみくもに飛びかかるのだ。

うちの庭のカエルも、正攻法では相手にしてもらえず、たまたまそばを泳いでいた金魚に飛びついたのだろう。

あー、それにしても、これってなんだか高等動物である人間のオスどもを連想させる話じゃないですか。

公園を歩いている女の子に、藪の陰からいきなり飛びかかるレイプ事件、わが町のローカル新聞に、ときどき載ってるんだよなあ。


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